玄天(げんてん)

 昭和40年以来毎年、年1回発行される北大弓道部部誌の名称。

玄天の命名は、第三代師範の故高畠太郎範士十段による。
 
 『遠く札幌農学校時代に発足し、北海道大学の現在まで、建学の精神を弓道部の部是とし、所謂北大精神の旗の下に北方の天に文化の炬火を掲げてきた北大の弓道部の伝統にふさわしい「誌名」がないものか。部員が、この酷寒に黒の弓道着に着がえ冷たい床に「只管行射」の坐につく姿をみて私は不意にあるものを感じた。黒衣は北大弓道部にもう定着している。そして全国学生弓道界にも北大カラーとして通り、畏敬の的となっている。
 そこで私は、「玄」の字に想い至り、少し調べてみた。「玄之又玄、衆妙之門」という言葉は、老子の言として有名である。至奥の道を玄というのである。「千字文」は「天地玄黄」で始まり、易経の坤卦には「天地而地黄」と言い、その注には「天者陽、始於東北、故色玄地、地者陰、始於西南、故色黄成」とあって、「玄」とは方角で言えば北であり、色であれば黒の事である。淮南子の天文訓にも「北方曰玄天」とある。其他「玄」には、遠い、深い、静か、かがやく、などの意がある。私はそこで「玄天」の語を選んだ。もって「部誌」の誌名としては如何。私の気持ちとしては、「玄天」は七十年の伝統に築き上げられた「北大弓道部」と同義語である。
 願わくば玄衣の青年よ、玄天に玄光を放つ玄武の士となられん事を。』

昭和40年 玄天 三号